風花日和
北海道函館市
住宅・店舗
所有者:個人
実施年:2019-2022年
・建物の活用企画
・設計
・施工監理
・製作家具デザイン
函館市にある明治9年築、茶舗として建てられた居蔵造りの建物を、個人住宅兼店舗として改修しました。
幾度かの改修を経て、外観や内観はすっかり姿を変えていましたが、小屋裏の棟木には墨ではっきりと建築主、棟梁ほか大工らの名前、建築年が残っていました。函館において、明治期からの度重なる耐火を逃れ耐えてきた建物は非常に珍しく、この建物は「函館最古の住宅」とみられています。
思いがけず歴史ある建物を購入したオーナーは、この建物が辿ってきた背景を知り、建物そのものの魅力を感じるうちに、「使える部分はできるだけ生かして、次の世代に残せるものにしたい」という思いを強くもたれました。
改修の方針は、これから住まうオーナーが快適にご自身の求める暮らしを楽しめるよう、建築当初の完全復元まではせず、基本的な構造の復元と使える部材の再利用とし、建築当初の箱の形は残しながら、間取りや外観は変更することとしました。
建物を一旦ばらしてみると、長く姿を隠していた構造部材は、大火で炭化した跡があったり、腐朽していたりと、想像以上に傷みが激しい状態でしたが、大工さんが、建築当初のものと思われる既存部材を、傷みの大きなものも含めて丁寧に保管してもらえたおかげで、多くの部材を無駄なく使うことできました。
建築当初にペンキで塗装されたと思われる板壁(青みの強いグリーン)は、再び内装の壁に使い、小屋裏の床に張られていた厚みのある板は、1階の床板になりました。建物の土台に使われていた笏谷石(北前船のバラストに使われていたと思われる)は、通路や庭の敷石に。鋳鉄製の釘や丁番は鍛冶屋さんの手によって、ドアの取っ手や家具へと生まれ変わりました。
改修後、風花日和は、函館の町並み保存に取組む「函館の歴史風土を守る会」の2022年度(第40回)歴風文化賞の再生保存建築物に選ばれました。